🏠 契約不適合責任とは?売主が注意すべきポイントをわかりやすく解説
不動産の売却では、**「引き渡した物件に不具合が見つかった」**というトラブルが起こることがあります。
このとき、売主が責任を負う可能性があるのが「契約不適合責任」です。
本記事では、不動産売却を検討している方に向けて、
「契約不適合責任」の基礎知識や売主が注意すべきポイントをわかりやすく解説します。
■ 1. 契約不適合責任とは?
契約不適合責任とは、売買契約の内容(契約で約束した状態)に、引き渡した物件が適合していない場合に、売主が負う責任のことです。
2020年4月の民法改正により、従来の「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」から名称と内容が変更されました。
🔹 具体的にはどんなケース?
- 売買契約で「雨漏りのない建物」として売却したのに、引き渡し後に雨漏りが発覚
- 給排水設備に不具合があり、正常に使用できない
- 登記面積と実際の土地面積が大きく異なる
- シロアリ被害や腐食があるのに説明されていなかった
このような場合、買主は「契約で定めた内容と違う」と主張し、売主に対して修補(修理)・代金減額・契約解除・損害賠償などを請求できる可能性があります。
■ 2. 契約不適合責任の範囲
契約不適合責任は、契約書の内容を基準に判断されます。
つまり、「どこまでが契約上の約束だったのか」が重要になります。
✅ 責任の対象となる「不適合」の例
- 建物:雨漏り・シロアリ・配管の故障・構造上の欠陥
- 土地:地中障害物、境界トラブル、土壌汚染など
- 権利関係:他人の権利が設定されている、抵当権が残っている など
💡ポイント:
自然な経年劣化や使用に伴う摩耗は、通常「契約不適合」とはみなされません。
■ 3. 売主が注意すべきポイント
① 物件の現況を正確に把握する
売却前に建物や土地の状態をよく確認し、把握できている不具合はすべて申告しましょう。
「知らなかった」「気づかなかった」は通用しない場合もあります。
→ 特に中古物件では、雨漏り・給排水・白アリ・基礎のひび割れなどを重点的にチェックするのがおすすめです。
② 重要事項説明・契約書で明確にする
仲介会社を通して売買する場合は、重要事項説明書や売買契約書の記載が非常に大切です。
不具合や修繕履歴を明記し、契約内容に含めておくことで、後のトラブルを防げます。
特に「現況有姿(げんきょうゆうし)」で売却する場合は、
「現状のままで引き渡し、売主は契約不適合責任を負わない」旨を明記しておくと安心です。
③ 契約不適合責任の期間を設定する
売主の責任期間は、契約で定めることができます。
一般的には、
- 個人間売買:引き渡し後2〜3か月程度
- 新築・業者売主の場合:2年(法定期間)
とするケースが多いです。
責任期間を明確にしておくことで、後の請求リスクを抑えることができます。
④ 「告知書(物件状況報告書)」を正直に記入する
仲介を通す場合、多くの不動産会社が「物件状況報告書(告知書)」の提出を求めます。
売主が知っている範囲で、雨漏り・白アリ・近隣トラブル・越境・設備の故障などを正直に記入することが重要です。
後から「隠していた」と判断されると、損害賠償など大きなトラブルにつながります。
■ 4. トラブルを防ぐための実践ポイント
| 対応項目 | 売主が取るべき行動 |
|---|---|
| 建物の状態確認 | 専門家(ホームインスペクション)による調査を依頼 |
| 契約内容の整理 | 契約書・特約条項で責任範囲と期間を明確に |
| 告知義務 | 知っている不具合はすべて報告・書面化 |
| 引き渡し後対応 | 買主からの連絡には誠実に対応する姿勢を保つ |
■ 5. 契約不適合責任を回避・軽減する方法
- 「現況有姿・契約不適合責任免責」特約を設ける
→ 個人間売買ではよく用いられる方法。
ただし、故意に不具合を隠した場合は免責になりません。 - ホームインスペクション(住宅診断)の活用
→ 第三者による診断を行うことで、売主・買主の双方が納得して契約できる。 - 保険の活用(既存住宅売買瑕疵保険)
→ 一定の条件を満たすと、引き渡し後に発覚した欠陥に対して保険金で修補費用をカバーできる場合も。
■ 6. まとめ:誠実な情報開示がトラブル防止の鍵
契約不適合責任は、売主にとって非常に重要な法的責任です。
しかし、事前にしっかりと物件の状態を把握し、正確な情報開示と明確な契約内容の設定を行えば、ほとんどのトラブルは防ぐことができます。
大切なのは、
「知らなかった」ではなく、「伝えておいた」と言える状態にしておくこと。
不動産の売却は人生の大きな取引です。
安心して次のステップへ進むためにも、契約不適合責任の基礎を理解し、リスクを最小限に抑えていきましょう。